今年の漢字について

こんにちは。 
シラチャの学習塾 リクラスです。

2025年もまもなく終了ですね。皆様どのような1年だったでしょうか。
さて、毎年日本では、年末になると『今年の漢字』が発表されますね。
 日本漢字能力検定協会が主催し、12月12日、世界文化遺産の清水寺にて2025年の世相を表す漢字を発表しているものです。
ちなみに、発表日である12月12日は、協会が制定した「漢字の日」です。「いい字(12)一字(12)」という語呂合わせから、毎年この時期に発表されています。
2025年の漢字は『』でした。
日本のニュースでは、熊による被害情報が連日報道されており、人間の被害者数は統計をはじめてから過去最高なのだそうです。
『熊』に対して、日本人がこれからどのような付き合い方をしていくかは、様々な意見があるでしょうが、いずれにせよ、環境問題や自然との共生について、人々が関心を高く持つということはいいことだといえるでしょう。

さて、ここからは少し漢字に関するお話を。
『熊』という漢字って、少し不思議ですよね。『熊』の部首は「れっか」です。「れっか」という部首は、火が4つの点に変化した形で、この部首を持つ漢字には炎が燃え盛る様子を表す『燃』『点』『熱』『煮』『照』『煎』など、やはり熱いものや火に関連する漢字が多いです。どうしてクマという動物を表す漢字として『熊』が使用されているのでしょうか。詳しく解説していきます。

1. 元々は「能」という字だった
『熊』という漢字のルーツは、実は『能』という字にあります。古代の文字を見ると、この字はもともと、大きな頭、逞しい体、そして鋭い爪を持つクマの姿そのものを描いた絵文字(象形文字)でした。元々はクマという動物を表す文字として『能』が使用されていたんですね。ではどうしてクマが『能』という字から『熊』に代わって表現されてしまったのでしょうか。

2. 「クマ」が「能力」という意味になった理由
当時の人々にとって、クマは森の中で圧倒的な力を誇る、畏怖すべき存在でした。クマがあまりに強く、何でもできる万能なイメージを持っていたため、次第にこの字は動物そのものだけでなく、「才能」や「〜することができる(可能)」といった、目に見えない「力」を表す言葉として使われるようになりました。この「クマ=万能な力」という感覚は、日本の精神文化とも深く共鳴しています。

  • アイヌ文化とキムンカムイ: アイヌの人々は、クマを「キムンカムイ(山の神)」として崇めてきました。クマは人間に肉や毛皮という「恵み」をもたらすために、神の国から客分としてやってきた尊い存在とされています。
  • 山岳信仰とマタギ: 山の中で生きるマタギたちにとっても、クマは単なる獲物ではなく、山の神の使いであり、畏敬の念を持って接するべき共存の対象でした。

このように、クマは「強い動物」だけではなく、人知を超えた力を持ち、恵みと災いの両方をもたらす「神聖な能力の象徴」であったからこそ、「能」という字が当てられたのです。

3. 混乱を防ぐための「文字のアップグレード」
「能」という字が「才能」や「可能」という意味で頻繁に使われるようになると、動物のクマを指したいときに紛らわしくなってしまいました。そこで、本来の「動物としてのクマ」をはっきりと区別するために、新しく記号を付け加えたのが「熊」という漢字です。
ここで付け加えられたのが、下部の点々である「れっか(灬)」です。これには大きく分けて二つの理由があると考えられています。

  • 動物としての印: 「馬」や「鳥」などと同じように、四つ足で歩く生き物であることを示す記号として添えられた。
  • 「火」のようなエネルギー: クマの肉や脂は非常に燃えやすく、古代から「強いエネルギーの塊」と見なされていました。実際に、漢語で「熊熊(ゆうゆう)」といえば、火が激しく燃え盛る様子を指します。クマの持つ凄まじい生命力を、燃え盛る「火」になぞらえて表現したのです。


最後までお読みいただきありがとうございます。
「能」と「熊」は、一方は人間の「才能」を指す言葉へ、もう一方は「火のような力を持つ神聖な獣」を指す言葉へと分かれました。 2025年の漢字として「熊」が選ばれた背景には、その出没被害という側面だけでなく、私たちが忘れかけていた野生の圧倒的なエネルギー、そしてかつて日本人が抱いていた「山の神」への畏敬の念を、改めて思い起こさせるという意味も含まれているのかもしれませんね。
漢字や英語など、新しい表現に出会ったときはこんな風に、なんで?どうして?に向き合って考えると、強い学びになりますよ。